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「新型コロナウイルスとの共存-これからが本番です-」(保健管理センターより)


2020/6/11

学生・教職員の皆さまへ

 2002年11月16日に中国広東省仏山市で最初の患者発生が報告されたSARSは、その後、香港、北京などから感染した人の移動によって、世界中へ運ばれ拡大して、大きな問題となりました。しかし、ワクチン、有効な治療薬が開発されるのを待たずに2003年7月5日にWHOから終息宣言が出されました。この原因は、1) SRASはほとんどすべての感染者が重症化したため、すべての感染連鎖を検出し、それらをすべて断ち切ることで封じ込めに成功したこと。2) ほとんどすべての感染者重症化で隔離されることにより、患者が動けなくなりうつしにくい環境になったことなどが考えられます。

 2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる新型肺炎(新型コロナウイルス感染症(COVID-19))は、グローバル化による人やモノの大移動によって、世界的に拡散しました。COVID-19は多くの感染者が無症候・軽症のため、感染した人は入院もせず動き回ることができるので、新型コロナウイルスは容易に他の人に拡がります。そのため、すべての感染連鎖を見つけることはほぼ不可能で、このウイルスは生き残ることができています。したがって、症状もでない不顕性感染者がかなり存在していると考えられます。本当に今回の新型コロナウイルスはずる賢いです。COVID-19の約40%は無症状感染者からうつされたものと推計されます。そして、PCR検査陽性者はCOVID-19患者の氷山の一角だと捉えた方が無難です。

 5月25日に緊急事態宣言が全都道府県で解除され、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着を前提とし、外出自粛や娯楽施設の使用制限等を緩和しつつ、社会経済の活動レベルが段階的に引き上げられてきています。しかしながら、北九州市では5月23日以降、第2波とされる感染者の急増が見られました。東京都は6月2日、新規感染者が増加傾向にあることから、感染再拡大の兆候があるとして独自の警戒情報「東京アラート」を初めて発動しました。また、北海道では2月から3月にかけて第1波があり、4月中旬から事態は悪化して感染者が急増し、第1波を超える第2波が押し寄せ、その後収束の気配は見られていますが、第3波の到来が懸念されています。

 最近、LancetとNew England Journal of Medicineという臨床医学分野で最も権威のある医学雑誌が、新型コロナウイルスに関する論文を撤回しました。データがあまりに揃い過ぎていることからデータ解析に疑義が生じて、論文の共著者が撤回を申し出ました。こんなことがあると、新型コロナウイルスに関して何が正しいのか分からなくなります。明らかなことは、新型コロナウイルスは人と共存しています。外出自粛や様々な施設の休業要請が緩和されれば、人と人の接触機会が増えて第2、第3の波は必ず到来します。これだけのような気がしています。したがって、新型コロナウイルス伝搬を効率的に抑える行動は何かと論理的に考えて、意識的に行動するのがよいと思われます。

 幸いなことに日本人は世界一清潔な国民性を持っているのは強みです。個人ができることはフィジカル・ディスタンシング(身体的距離の確保)、マスク着用、手洗い、うがい、3密(密閉、密集、密接)の一つでもあれば避ける、大声で喋らない、カラオケ・スポーツジムなどの施設には行かないことなどです。新型コロナウイルスは上気道で増殖します。歌ったり、大きな声で話したり、激しい運動で呼吸が荒くなった際に、感染させるという研究もあります。もし糞口感染があるとしたら、手洗いはとても重要です。外出先で食事をするとき、帰宅したときは必ず手洗いをする必要があります。置き箸しかないところで食事する可能性がありますので、箸を持参しておくことは大切です。さらに、いくら休業要請が解除されたからといっても、健康に留意した適切な外食利用を考慮すると、飲酒を伴う飲食店へは当面の間は出入りしないこと、飲酒を伴わない自宅外での会食もできるだけ控えることは当然です。これまでの生活様式はこうだったと言うのではなく、これからはウイルスが伝搬しにくい社会を目指して、個人個人がしっかり考え納得して「新しい生活様式」を作り上げてゆくことが肝心です。


保健管理センター      
秦 幸吉、福島 加菜美