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感染症基本対策継続の必要性(保健管理委員会より)

学生の皆さまへ

出雲キャンパス保健管理委員会
秦 幸吉、福島 加菜美

 新型コロナウイルスワクチン(コロナワクチン)臨床試験の第3相試験ではその有効性は95%だと報告されました1)。有効性95%とは「100人にコロナワクチンを打ったら95人が発症しなかった。」ということではなく、「コロナワクチンを打たずに発症した人の95%は、コロナワクチンを打ってさえいれば発症しなかったはず。」ということです。昨年末から今年初めにかけての第3波とき、1日の感染者数ピークが約8,000人でした。あのときは、日本ではコロナワクチン接種は始まっていなかったです。あり得ませんが、もしあのときに国民全員がコロナワクチンを接種していたら、感染者数はピーク時でも400人となるので、このワクチンは相当効くということです。また、インフルエンザワクチンの有効性は60%程度(年により多少違いますが)なので、コロナワクチンの発症予防効果はかなり期待できるということです。しかしながら、コロナワクチン接種の先進国であるイスラエルやアメリカでは感染者数が増えてきて、ブレークスルー感染(ワクチン2回接種しながらも感染)する人も増えています。社会的な制限解除(行動制限の緩和、集会の人数制限や屋内でのマスクの着用義務などの撤廃など)がその一因ではないかとされています。
 
 コロナワクチン第3相試験はアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ドイツ、トルコの154施設で実施され、観察期間は2020年7月27日~11月14日でした。年齢、性別、生活様式は様々ですが、ワクチン接種するか、しないかということ以外は条件を同じにして比較対照できるよう2万人くらいの「群」を用意して、片方にコロナワクチン、片方にプラセボ(偽ワクチン)を打ちました。参加者にはどちらの群に割り付けされたかは知らせずに、接種後も感染症基本対策を継続させ、自然に感染が生じるまで待って、コロナワクチンが実際どの程度効くのかを調査しています。また、あのころデルタ株はほとんど流行っていませんでした。デルタ株感染者は従来株感染者よりも多くのウイルスを排出することが明らかなため、感染力が強いです。最近のイスラエルやアメリカでの感染者数増加は、新型コロナウイルスへの自己防衛対策が疎かになり、多くのウイルスが体内に侵入したため、コロナワクチン接種により得られた免疫力では対抗できなくなったためと思われます。
 
 したがって、皆さまに分っていただきたいことは、しばらくの間はコロナワクチン接種後も油断することなく、これまで通りに(3密+大声)回避、マスク着用、換気、手洗い・うがいの励行、ソーシャルディスタンス確保、移動制限などの基本的感染対策を続けていく必要があるということです。また、変異株の出現が相次いで報告されており、引き続き警戒が必要です。

1) DOI: 10.1056/NEJMoa2034577