血糖値スパイク


2016/10/14

保健管理センター長のひとこと【血糖値スパイク】

 先日、NHKスペシャルで「“血糖値スパイク”が危ない~見えた!糖尿病・心筋梗塞の新対策~」という番組がありました。ご覧になられた方もおられると思います。この番組に対する私の見解を述べさせていただきます。
 食事により多量の糖質を摂取すると食後異常に血糖値が上昇するため、膵臓から多量のインスリンが分泌され一気に血糖値が低下して血糖値の乱高下が生じます。この現象を血糖値スパイク(グルコーススパイク)と言い、これが動脈硬化、糖尿病、認知症、がんなどの生活習慣病の原因になること、そして、グルコーススパイクの発生予防策などが紹介されていました。
 グルコーススパイクはなぜ生活習慣病を招くかということですが、NHKスペシャルではグルコーススパイクによる活性酸素発生が原因であるとされていました。もちろん、これは正しい説明ですが、さらに詳しく述べると多量のインスリン分泌自体により活性酸素発生が助長されると考えられます。人間が白米、品種改良された小麦製品(パン、パスタ、うどんなど)などの精製穀物を食さなかったころには、食後血糖値は異常に上昇することはありませんでした。そのため、食後のインスリン分泌も適度に分泌されていました。人類の歴史は精製穀物を摂取しなかった時代が長く続いたため、糖質を代謝することに関しては、精製穀物を摂取せず、肉を食べたり、油を燃やしてエネルギーにしていた時代に最適化されています。つまり、我々の遺伝子は精製穀物を摂取することに対して対応できるようにプログラミングされていないのです。人間が精製穀物を食べるようになった現代では、食後血糖値の異常高値に対してインスリン分泌機能が誤操作を来して、大量にインスリンが分泌されます。この大量インスリン分泌が活性酸素発生にさらに拍車をかけます。また、インスリン自体がある種の長寿遺伝子の発現を抑制することも生活習慣病発生に関与しています。したがって、グルコーススパイク発生を抑えることがとても重要であります。
 また、多量の糖質摂取によるインスリンの過剰分泌により余分な糖質が中性脂肪に変換され、脂肪細胞に過剰に蓄えられます。そして、内臓脂肪が多くなってきます。すると、脂肪細胞からTNF-α、PAI-1などの炎症性サイトカイン分泌が増加して、全身を巡るようになり、さらに動脈硬化、糖尿病、認知症、うつ病、がんなどが発症しやすくなります。
 したがって、すべての生活習慣病発生にはグルコーススパイク発生が大きな要因であると言っても過言ではないです。
 今回のNHKスペシャルは後半ではグルコーススパイクを発生させないための対策として、① 食べる順番、② 食事は抜かない、③ 食後に運動という3つの対策を紹介していました。食べる順番では、野菜、肉、魚などで最後にパンやご飯を食べるといいとしていました。しかし、食事の最後に精製穀物を食べるのは如何なものかと思われます。この方法では、すべての人にグルコーススパイク発生を抑制するのは無理です。また、食事を抜かないとう予防法も疑わしいです。私は朝食、夕食はほぼ毎日食べますが、仕事の都合上、昼食を食べる時間がないときがあります。そんなときは、無理に食べなくても忙しくて、空腹感を覚えませんし、すぐに夕食の時間になるので、あえて昼食を食べなくても十分仕事はできます。食べる順番、 食事は抜かないなどと言ったその場しのぎのようなやり方より、糖質さえ控えればグルコーススパイクは発生しにくくなるだけの話です。もちろん、食後の運動については否定しませんが、糖質を控えた上での運動が大切です。これから、寒くなりますので、寒いときに無理に運動して頭の血管が切れたら元も子もないです。運動はやりたいときに、晴れた日に心地よくできればそれで十分だと思います。
 NHKでグルコーススパイクが紹介されたことはとても良かったと思いますが、最後に「グルコーススパイク予防には糖質を控える、つまり精製穀物を控えたら、すべての生活習慣病はかなり予防できる」という本質に迫った簡単な結論で番組を締めて欲しかったです。

2016年10月14日