保健管理センター長のひとこと(2017年1月)

健康長寿

2017/1/16

保健管理センター長の一言【健康長寿】

 皆様は「健康長寿」という言葉をどのように解釈されていますか?「健康寿命」と「平均寿命」は如何ですか?
 「健康寿命」とは厚生労働省の定義では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。つまり、「他人の力を借りなくても日常生活で支援や介護を必要としない、自分の力で生活できる期間」ということです。「平均寿命」とは「生まれた時の平均余命」です(「平均寿命」に関しては、話がややこしくなりますので、今回はこれ以上詳しくは説明しません)。「平均寿命」が長くかつ「平均寿命」と「健康寿命」の差ができるだけ少ないことが「健康長寿」ではないかと思われます。しかし、日本では平成13年から平成25年の間では、平均寿命と健康寿命の差は、横ばい、あるいはやや大きくなっています。この差は平成25年では男性:9.02歳、女性:12.40歳です。したがって、この期間、日常生活で人の世話にならなければならないということです。
 「健康長寿」でいたければどうしたらいいか?という問いは、誰もが考えることでとても大切です。この問いに対して、日本ファンクショナルダイエット協会理事長の白澤卓二先生は「身のまわりに健康長寿の方がいれば、その方の生活習慣を見習えばいい。」と話しておられます。
 私の義父は今年の1月2日に満90歳の誕生日を迎えました。いまのところ、健康上の問題はなく、日常生活も他人の支援や介護を必要としないで生活できています。普段は、テレビを見て横になっていることが多いようですが、庭の手入れ、金魚の世話などはとても気合いをいれてやっています。昨年までは、初夏になると梯子に登って、松の木の剪定をしていました。今年はどうなるかわかりませんが。現在、孫4人、ひ孫6人いますが、全員の名前を自分で「命名 ○○」と書いて飾っています。本年5月に7人目のひ孫が生まれる予定ですので、すでにその子の名前を書くだけにして準備しています。
 義父の生活習慣をみて感じることは、食事が驚くほど少食です。これは最近からではなく、私が義父を知った30年以上前から感じていました。腹八分目と言いますが、義父の場合は腹七分目いやそれ以下のように思います。2012年12月17日より2013年6月12日まで存命人物のうち世界最高齢であった木村 次郎右衛門さん(享年116歳)は、インタビューで長寿の秘訣を問われると、「食細くして命永(なが)かれ」と決まり文句の格言を披露しておられました。そして、木村さんは「『腹八分目』より『腹“六”分目』」とも話しておられたとのことです。
 以前、このコーナーで紹介しましたが、ヒトには長寿遺伝子という遺伝子があります。長寿遺伝子とは健康や長寿に関連する遺伝子の総称であり、誰もが持っている遺伝子ですが、普段はそのスイッチはオフ(不活性)になっています。摂取カロリーが制限されたとき、「腹7分目」あるいは「腹6分目」の少し厳しい条件下で、活性化することが明らかとなっています。長寿遺伝子は、人間の体内に存在している50兆の細胞の中にある遺伝子をすべてスキャンして、壊れたり傷ついたりしている遺伝子を修復してくれます。つまり、この遺伝子は寿命だけでなく、「老化や病気をくい止める働き」にも関与していると考えられています。アメリカのウイスコンシン大学のアカゲザルを使った約20年にわたる研究によると、摂取カロリーを約3割減らすと糖尿病やガンなど加齢に関連した病気で死ぬ確率が1/3に減ることが分かったというのです。長寿遺伝子は、人間の生死が厳しい自然環境に左右されていた時代を生き延びるために備わった遺伝子だとされています。飽食・過食と言われて久しい昨今では、食糧難を生き延びることもないため、長寿遺伝子は必要ではなくなってきて、普段はオフになってしまっています。昔から「腹八分目に医者要らず」という諺がありますが、健康長寿の方々は経験的にこのことをご存じではないでしょうか。
 「腹八分目から腹六分目」を育ち盛りの子や若い方に勧めるには無理があると思いますが、ある程度の年齢の方にとっては、健康長寿の一つの鍵になるのではないかと思います。
 添付しました写真は義母(84歳)が義父に作っている朝食の一例です。これくらいの量でも、義父は完食しないようです。パンは義母がホームベーカリーで作っています。

2017年1月16日

 choujyu

参考文献
1) http://kenkochoju.pref.miyazaki.lg.jp/healthlongevity/
2) http://truehealth-jp.com/1093
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E6%AC%A1%E9%83%8E%E5%8F%B3%E8%A1%9B%E9%96%80
4) http://www.sankei.com/west/news/130629/wst1306290073-n2.html
5) 白澤卓二著(2011年)「100歳までガンにならない食べ方 ボケない食べ方」(青春新書)
6) Colman RJ et al. Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkneys. Science 2009; 325: 201-204.

保健管理センター長のひとこと(2017年)

前月2017/1次月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930311234

当月ページ一覧