「HbA1cとCRP」


2017/6/2

保健管理センター長の一言【HbA1cとCRP】

 「糖尿病でない人は平均血糖値が低ければ低いほど認知症になりにくい」という論文があります。この論文ではHbA1c値から平均血糖値を算出しています(平均血糖値(mg/dl) = 28.7 x HbA1c- 46.7)1)。HbA1cは赤血球の中で体内に酸素を運ぶ役目のヘモグロビンと、血液中のブドウ糖が結合したものです。糖化ヘモグロビンともいい、血糖値が高いほど糖化ヘモグロビンは形成されやすくなりますの
で、糖尿病の患者さんでは血液中に糖化ヘモグロビンの顕著な増加がみられます。血糖値は常に変化していますが、HbA1cは濃度が安定しています。ヘモグロビンの寿命は約4ヶ月であるため、HbA1cの値を調べれば、過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を知ることができます。血糖値が検査前の食事や飲酒、それに検査の時間によって変動するのに対し、HbA1c(正常値; 4.6~6.2)はそれらにほとんど影響を受けないという特徴もあります2)
 平均血糖値とHbA1cはほぼイコールなので、HbA1c値が認知症予知に重要な因子であると考えられます。平均血糖値100mg/dl(HbA1c; 5.11)に比べて、平均血糖値95mg/dl(HbA1c; 4.94)では10%以上、平均血糖値90mg/dl(HbA1c; 4.76)では20%以上認知症のリスクが低下します1)。つまり、HbA1c値が低いとうことは、認知症になりにくいとうことです。HbA1c値が高いということは、心を失いやすいと言っても過言ではないです。同じ論文では、糖尿病の人は平均血糖値が160mg/dlあたりが最も認知症になりにくく、この値より低くても、高くても認知症のリスクが高くなると報告されています1)が、その理由については論じてないです。私の私見ですが、糖尿病治療に安易に、経口糖尿病薬やインスリン投与を行うことがこの理由の一つではないかと考えています。HbA1cは4.6~6.2が正常範囲で、加齢に伴い上昇するとされていますが、私はどの年代でも5.4以下であることが無難だと思います。
 もう一つC-reactive protein(CRP)という検査項目があります。CRPは体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質で、CRPの産生量は炎症反応の強さに相関するため、血清中のCRPを定量して炎症反応の指標とすることができます3)。すなわち炎症が強いほど血清CRP値は高くなります。CRPは細菌感染、ウイルス感染、外傷、心筋梗塞、胃炎、腸炎などの急性炎症性疾患で上昇しますが、細胞の炎症であるガン、脂肪細胞の炎症である肥満、血管の炎症である動脈硬化、脳細胞の炎症である認知症、膵臓の炎症である糖尿病、関節の炎症であるリウマチ、結合組織の炎症である自己免疫疾患などの慢性炎症性疾患でも上昇します4)。慢性炎症性疾患では、CRP値は0.3~2.0mg/dlと急性炎症性疾患の際に比べて比較的低値です。風邪、扁桃腺炎などの咳、痰、喉の痛み、熱などの症状がなく、CRPが上昇している際には先ほど述べた慢性炎症性疾患が存在しています。CRP値は0.3mg/dl未満が正常とされていますが、0.03mg/dl未満を保つことが大切だと思います。
 以上より、HbA1c、CRPを上げないことが健康長寿のためには大切であります。では、どのようにしたら上げないですむか?は、生活習慣、とくに食事であり、真の“糖質制限”を心がけることに尽きます。真の“糖質制限”とは、私の行っているケトジェニックダイエットと表裏一体であり、後日、詳細に解説させていただきます。HbA1cあるいはCRPの上昇を指摘されておられる方は、気軽にご相談下さい。個人の生活習慣に対応して対処させていただきます。

2017年6月2日

参考文献
1) Crane PK, et al. Glucose levels and Risk of Dementia. N Engl J Med 2013, 369, 540-548.
2) http://medical-checkup.info/article/43444237.html
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/C%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E6%80%A7%E8%9B%8B%E7%99%BD
4) http://media.welby.jp/disease/t2diabetic/11951/

 motu  tori

図1                      図2

sarada     nuku

図3                                                           図4

図の説明
現在ではケトジェニックダイエットと解釈していい食事がコンビニ、ファミリーレストランでも手に入ります。セブンイレブンの博多モツ鍋(図1)、鶏団子鍋(?)(図2)、ガストのアボカドシュリンプサラダと海老のミニサラダ(図3)、ローストビーフとクレソンの和風サラダ。