うつと糖質制限


2017/9/19

 保健管理センター長の一言【うつと糖質制限】

 先日、鳥取大学精神行動医学分野の岩田正明准教授らのチームが肝臓で脂質から生成される物質・βヒドロキシ酪酸(betahydroxybutyrate: BHB)に、うつ病を抑制する作用があることが動物実験で分かったと発表されました1)。テレビや新聞で大きく報道されたので、ご存知の方もいらっしゃることと思います。詳細はこのURLをクリックして下さい。BHBの作用機序などが説明されています。http://www.sankei.com/west/news/170821/wst1708210068-n1.html

 この実験でBHBを投与されてうつ症状が改善されたラットではBHB投与前ではBHB血中濃度が60-150 μmol/Lであったのに対し、投与1時間後で150-300 μmol/Lとほぼ2倍に上昇しています。おもしろいと思ったのは以下の点です。ヒトでも糖質を普通に摂っているとBHB血中濃度は26~122μmol/lとされていて、ラットのBHB血中濃度は人間とほぼ同じであることです。そして、BHB血中濃度が2倍になるだけでうつ症状が抑制されたということです。私の推奨しているケトジェニックダイエットを行っているとBHB血中濃度が上昇してきます。ただ、BHB血中濃度はケトジェニックダイエットをしていても、かなり日内変動、個人差があります。私の場合は通常、300~800μmol/Lです。ケトジェニックダイエットをしていない方でも、朝食をしてそのまま夕食まで水分だけで何も食べなかったら、BHB血中濃度は300μmol/Lくらいまで上昇するとされています。
 動物実験の結果をそのまま人間にあてはめるのは、無理があるようにも思われますが、ケトジェニックダイエットつまり正しい糖質制限を行っていると、うつになることはない。そして、うつの人でも食事を正しい糖質制限にあらためれば、うつ症状は改善するのではないかと考えられます。食事の改善でBHB血中濃度が上昇しますから、楽しく食べて心も安定すればいいことだと思います。
 写真は採れたてのピーマンとピーマン、ベーコン、豆腐、卵の炒めものです。彩りも綺麗で楽しくなりませんか?これを夕食に食べた日の血糖値上昇は28mg/dlでした(もちろん、これだけを食べたわけではないですが)。血糖値上昇28mg/dlは茶碗1杯のごはんを食べた場合のほぼ半分です。日頃から、血糖値上昇の少ない食事を心がけるのは大切ではないでしょうか?

参考文献
1) Yamanashi T, Iwata M, et al. Beta-hydroxybutyrate, anendogenic NLRP3 inflammasome inhibitor, attenuates stress-induced behavioral and inflammatory responses. Sci Rep. 2017 Aug 9;7(1):7677. doi: 10.1038/s41598-017-08055-1.

2017年9月19日

pi ita

写真1                   写真2

参考文献
1) Yamanashi T, Iwata M, et al. Beta-hydroxybutyrate, anendogenic NLRP3 inflammasome inhibitor, attenuates stress-induced behavioral and inflammatory responses. Sci Rep. 2017 Aug 9;7(1):7677. doi: 10.1038/s41598-017-08055-1.