保健管理センター長のひとこと(2018年10月)

「日本の長寿村短命村」

2018/10/10

保健管理センター長の一言【日本の長寿村短命村】

 前回、東北大学名誉教授・近藤正二先生が執筆された「日本の長寿村短命村」(1972年6月27日初版発行)(写真1-3)に関して、少しだけ紹介しました。今回は詳しく解説されていただきます。読んでみて筆舌に尽くしがたい素晴らしい内容で感激しました。
 女性セブン2018年8月23・30日号に『新われらの時代に/食と習慣が証明する・日本の「長寿村」「短命村」』として紹介されました。その冒頭に以下のような文言が書かれていました。『絶版となった後も、専門家の間で語り継がれる一冊の本がある。1972年に初版が発行された「日本の長寿村・短命村」(サンロード出版)だ。著者は東北大学名誉教授で医学博士だった近藤正二氏(1893~1977年)である。衛生学を専門とする近藤博士は食生活や生活習慣が寿命に与える影響に大きな関心を持ち、1935年から1971年の36年にわたり、北海道から沖縄の八重山諸島に至るまでの全国津々浦々990か所を、自らリュックを担いで訪ね歩き、各地で長寿に関する研究を重ねた。そして、「どうすれば長寿になれるか」に徹底的にスポットを当てた研究を口述で編んだのが「日本の長寿村・短命村」なのだ。』
 近藤先生はこの研究を始められた時には、「酒を飲むところは短命で、秋田県の人が日本一短命なのは、どぶろくを飲むからだ。」、「重労働のところは早く老化して長生きをしない。」と考えておられました。ところが、調査を進めると「酒を飲んでも長生きする。」、「重労働をしていても長生きする、労働過重が短命にした事実がみられない。」、「辛い仕事でもむくわれる。」ことに気づかれました。そして、「結局、何が長寿、短命の分かれ道になっているかという実際においては、それが食生活であることは事実なのです。」と明言しておられます。
 「日本の長寿村短命村」を要約すると、長寿村・短命村の食事は1) 米偏食、大食の村は長寿者が少なく、住民が一般に早老で、とくに脳卒中による若死に(40歳ごろから)が多い。2) 野菜不足で魚を大食する村は長寿者が少ない。とくに心臓疾患による若死にが多い。3) 長寿村では必ず野菜を十分に常食している。果物は野菜のかわりをしない。4) 海草常食のところは脳卒中が少ない。このような事実から考えられる健康長寿食は、1) 米(精製穀物)を控える。2) 魚、肉、卵もしくは大豆を毎日食べる。ただし大食しない。3) 野菜は多く食べる。カボチャ、ニンジンは特によい。果物は無理に食べなくてもよく、嗜む程度でいい。4) 海草も常食する。5) 油を毎日少しずつとる。6) なるべく牛乳を飲む。7) 食事はよくかんで味わいながらゆっくり楽しんで食べるべきものである。そして、毎日運動をする。とくに毎日歩くことが大切である。さらに、「日々の仕事の中に楽しみを見出して、毎日すすんで働くのが真の楽しみであり、それがまた自然に健康長寿への道にも通ずるのです。そして、もしそれが少しでも世のため人のためになるなら、このうえ幸いであり、真の生きがいでしょう。」と付け加えられています。間違いなく、現代でも通用する健康長寿法ではないでしょうか。
 現在では、この健康長寿法が科学的に証明されるようになってきています。この本の最後には、「特に毎食、大豆製品と魚を少量ずつ必ず食べるようにつとめ、また油も毎日必ず摂るようにしました。すると自然に米の食べ方が少なくて十分満足するようになりました。それとともに疲労しやすい体がいつとはなしに疲れを感じない、根気のつづくような体に代わってきました。・・・・・私の研究はすべて理屈は抜きにして、もっぱら実際たしかめて知り得た体験ばかりです。どうか、ひろく役立てて、元気に長寿を得られるように願ってやみません。」と書いてあります。私も糖質を控え、そのため少なくなったカロリーをタンパク質、脂質(オリーブオイル、ココナッツオイル、オメガ3脂肪酸)で補い、野菜を1日400g以上摂ることを基本とした食事を3年半以上続けていますが、疲れにくくなったように感じています。
 近藤先生は料亭の美食を好まれなかったようです。夕食は家でゆっくり家族と楽しんでするものですので、私も料亭で食事するなど考えられないです。近藤先生は料亭などでの宴会では、魚や肉は少量ずつ手をつけられて、もしそこに人参がなければ、常に手もとにもっておられる卸しがねで人参のおろしを作って召し上がられたとのことです。とてもいい話だと思います。私も先日、出雲市内のホテルで会食があった際に、前もってキャベツ千切りの大盛、トマトスライス(1個分)、糖質0ビール(アサヒ クリアアサヒ 贅沢ZERO)500mlをお願いしました(写真4)。納豆(舌鼓 あづま食品)と携帯用ココナッツオイルは持参しました。これらを先に食べると、安心したような気持ちになります。 
 「日本の長寿村短命村」は島根県内では出雲市中央図書館、島根県立図書館、松江市中央図書館に所蔵されています。おそらく、全国主要都市の図書館なら所蔵されていると思います。食の大切さ・ありがたさを実感・感動するために多くの方々に読んでもらいたい書籍です。
 
写真1 「日本の長寿村短命村」(初版)。
写真2 「日本の長寿村短命村」(新版)。内容は初版と同じです。
写真3 「長寿村ニッポン紀行」。「日本の長寿村短命村」(初版)と同じころに出版されていて、内容は「日本の長寿村短命村」と一部重複しています(島大図書館所蔵)。
写真4 本文の通りです。

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写真1                            写真2

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写真3                             写真4

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