春節


2018/2/20

保健管理センター長の一言【春節】

 今年の山陰の冬は年末から年始にかけてとても寒く感じられていましたが、2月初旬に久々の豪雪となり本当に厳しい冬でした。しかしながら、春節の訪れとともに次第に春の気配を感じるようになってきました。
 最近、野菜・エキストラバージンオリーブオイル(extra virgin olive oil; EVOO)摂取を基本とする食生活改善が若い女性の月経困難症軽減に効果であるということを報告しました1)。私は以前から有効であるとはされていますが、若い女性の月経困難症に対して安易に低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬(low dose estrogen progestin: LEP)を投与することは慎重にすべきではないかと思っていました。何故なら、LEP投与と潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患との関連、さらに腸管透過性亢進・腸管壁浸漏症候群(leaky gut syndrome; LGS)との関連までも指摘されているからです2)。LGSは慢性疲労症候群、リュウマチ、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、セリアック病、パーキンソン病、多発性硬化症、喘息など様々な疾患発症に影響を及ぼすと考えられています3,4)。したがって、若い女性の月経困難症対策については、投薬前に食生活改善が優先されるべきであると言いたかったのです。
 話は変わりますが、以前のがん治療は手術療法、抗がん剤療法、放射線療法がメインでした。しかしながら、最近では、分子標的療法、免疫療法など新しい治療法が開発されていますが、その一方で重篤な副作用も報告されています。分子標的療法、免疫療法などがpromisingとは言っても、ヒトの正常なシグナル伝達系や免疫系を操作することですから、予期せぬ副作用が生じても不思議ではないです。とくにエレッサ発売時のような悲劇は二度と繰り返してはいけないと思っています。やはり、がんだけでなく、高血圧、動脈硬化、糖尿病、認知症、うつ病などの生活習慣病は日ごろからの予防が大切であることには変わりはないです。病気になってから長期に投薬を受けると必ず副作用が生じてきます。
 現在は、白米、パン、麺類、砂糖が入った甘いお菓子、小麦粉を使ったお菓子など人間の遺伝子が対応しきれない精製穀物が氾濫しています。そんな食物を摂取することによって生ずる高血糖、インスリン過剰分泌による活性酸素発生による体の酸化、糖化が免疫系、神経系、内分泌系のバランスを乱し、生活習慣病を発症するのではないかと思います。「糖質を大量にとる現在の食事スタイルは、糖質およびインスリン値の定期的な上昇をもたらす。これは、糖尿病・冠状動脈疾患・がん・老化などを引き起こし、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。」とヒューマン・ニュートリションという栄養学の専門誌には書かれています。
 私は2017年5月よりケトジェニックダイエットという糖質摂取を控え、タンパク質、オリーブオイル・ココナッツオイル・オメガ3脂肪酸などの良質の油、野菜をしっかり摂ることを基本とした食事をしています。ケトジェニックダイエットを行って感じるようになったことは、1)疲れにくい、2) 何とも言えない心地よさ、3) 食の大切さ・楽しさ・素晴らしさの実感などです。おそらく、血糖値の安定、インスリン分泌の少なさなどが代謝を安定させ体に負担をかけないからだと思っています。自分の体に合った理想的なケトジェニックダイエットを模索しながら、春節という文字通りの新春の季節に、生活習慣病予防の重要なピースの一つがケトジェニックダイエットではないかとあらためて思っています。もちろん、”Undoubtedly the best is yet to come”ですが。  

 最近撮った写真を添付します。

yuki shokudou

yukidaruma        kumo 

参考文献
1)  秦 幸吉. 食生活改善が月経困難症に及ぼす影響. 島根医学 2017; 37: 175-180.
2)  Cornish JA et al. The risk of oral contraceptives in the etiology of inflammatory bowel disease: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 103: 2394-2400, 2008.
3)  Odenwald MA and Turner JR. Intestinal permeability defects: is it time to treat? Clin Gastroenterol Hepatol 11: 1075-1083, 2013.
4)  Fasano A. Zonulin and its regulation of intestinal barrier function: the biological door to inflammation, autoimmunity, and cancer. Physiol Rev 91: 151-175, 2011.