保健管理センター長のひとこと(2020年1月)

「悪魔の蔵」伝説ワイン・「カッシェロ・デル・ディアブロ」、「フレンチパラドックス」

2020/1/28

保健管理センター長の一言【「悪魔の蔵」伝説ワイン・「カッシェロ・デル・ディアブロ」、「フレンチパラドックス」】

 コンチャ・イ・トロ (Concha y Toro)とは、1883年スペインの名門貴族一族のメルチョル・コンチャ・イ・トロによって創業されたチリの名門ワイナリーです。コンチャ・イ・トロには、最も出来のいいワインを貯蔵しておく特別の蔵があったようです。しかしながら、その蔵に貯蔵してあったワインがあまりに美味しくて盗みが絶えませんでした。そこで、これを見兼ねた創立者のドン・メルチョー氏は、「この蔵には悪魔が棲んでいる」という噂を流しました。噂は炎のように広がり、人々を恐れさせその美酒を守ったといいます。この蔵は後に「悪魔の蔵」と呼ばれ、今もなお大切なワインが静かに貯蔵されています。そのワインとは、スペイン語で「悪魔の蔵」を意味する「カッシェロ・デル・ディアブロ (Casillero del Diablo)」です。コンチャ・イ・トロが世に送り出すこのプレミアムワインは、数多くの国で最もグローバルに販売されるワインブランドの1つで、チリを代表するワインとなっています。
 メルシャンが1996年10月7日~11月30日、コンチャ・イ・トロ社「カッシェロ・デル・ディアブロ」のコンセプトショップ、悪魔のバル「Diablo」を銀座でオープンしました。合計11種類の「カッシェロ・デル・ディアブロ」のワインをグラスやボトルで楽しめ、同店オリジナルの赤ワイン5種や白・ロゼワイン5種の飲み比べセット、各ワインに合うオリジナルの料理を提供しました。あまりにも好評であったため営業期間を当初予定の11月30日から12月22日まで延長したようです。残念ながら、私は訪れる機会には恵まれませんでした。
 私はカッシェロ・デル・ディアブロ カベルネ・ソーヴィニヨンをよく飲みます。KIRINホームページの商品情報には「濃いルビー色。チェリー、ブラックカラント、ブラックプラムを思わせる魅惑的な果実の香りに、オーク樽由来のヴァニラのニュアンスが感じられます。なめらかなタンニンと熟した果実やベリーの味わい。果実味と上品なタンニンのバランスが印象的なワインです。」とテイスティングコメントが記載されています。私にはテイスティングコメントは分かりませんが、お手頃価格で辛口の美味しい「チリカベ」(チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンで造られた赤ワイン)という感じです。昨年10月の急に寒くなった休日に豚汁とカマンベールチーズで飲みました(写真1-3)。とても美味しく感じられました。
 「フレンチパラドックス」という言葉があります。フランス人は乳製品や牛肉・豚肉などの動物性脂肪、飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を摂取しているにもかかわらず、冠状動脈性心臓疾患に罹患することが比較的少ないとう逆説的な考え。これを「フレンチパラドックス」と称して、何か他の要因が働いて心臓を保護しているのではないかと考えられました。そんな中、赤ワインに含まれているフィトケミカルの一種であるポリフェノールには、その有する抗酸化作用により動脈硬化予防、ガン予防、アルツハイマー病予防、高血圧予防などの効果があるとされています。さらにそのポリフェノールの一つであるレスベラトロールは、酵母菌や動物実験でサーチュインという生命の寿命が延びるとされている長寿遺伝子を活性化させる作用や、強い抗酸化力、抗炎症力が認められています。したがって、「フレンチパラドックス」の原因は赤ワインではないかと指摘されるようになりました。
 最近、総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連する。総脂質および脂質の種類は、心血管疾患・心筋梗塞という心疾患発症、それによる死亡と関連していない。飽和脂肪酸摂取は脳卒中と逆相関している¹⁾。ということが明らかとなりました。つまり「フレンチパラドックス」の「動物性脂肪、飽和脂肪酸が心疾患の原因」であるという前提が間違っているということです。私は以前から、フランス料理は糖質の多いデザートとかを食べなければ、低糖質で良好なタンパク質・脂質が摂れる素晴らしい糖質制限食だと思っていました。もちろん、赤ワインに含まれているレスベラトロールなどのポリフェノールには様々な効能があるということを否定する訳ではないです。
 「悪魔の蔵」伝説ワイン・「カッシェロ・デル・ディアブロ」、「フレンチパラドックス」にまつわる話を思い出したので書かせていただきました。でも、赤ワインは1日の仕事が終わって、「今日も1日仕事したな、明日も頑張ろうか」と思いながら家でゆっくり飲む。気の合った仲間と美味い食事をして、楽しく話しながら飲む(写真4,5)。リラックスしてワイングラスを傾けるそれだけでいいのではないかとこのごろ思っています。

写真1写真2写真3
↑ 写真1‐3

写真4写真5
↑ 写真4,5

文献
1) Lancet. 2017 Aug 28. pii: S0140-6736(17)32252-3. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3