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新型コロナウイルスの変異は自然現象(保健管理委員会より)

学生の皆さまへ

出雲キャンパス保健管理委員会
秦 幸吉、福島 加菜美

 最近、新型コロナウイルス変異株は従来型に比べて、感染力が高いとされています。ことの発端は英国のジョンソン首相が昨年12月19日の記者会見で、ロンドンを含む英南東部で流行が拡大している新型コロナウイルスの変異種(N501Y変異を含む)について、「従来のウイルスより最大7割流行しやすい可能性がある」と明かしたことです。
 ウイルスはヒトの体に感染して、細胞の中で子孫のウイルスができるときにはしばしば遺伝情報が書き換わります。ウイルスが自分の遺伝情報を複製するときに書き換わるのです。そして、結果としていろんな変異のあるウイルスが一つの宿主個体内(一人の人の体内)でも生じ得ます。感染が広がれば感染者が増えてその体内でバリアント、つまり変異したウイルスというものが自然に発生し、より適したものが自動的に増えていきます。体内で増えやすくて感染力の強いものが当然ドミナントになっていく(多くなる)ので、変異したウイルスが出てくるのも、広がってくるのも、感染の拡大とともに起こる自然な現象です。
 「ウイルスの変異はよくあることで細胞のレセプターとのくっつきやすさ(親和性)などは変わる」けれども、これをヒトの集団に適用したときに、実効再生産数(実際の環境下で、1人の感染者が何人に感染を広げるか)に直接かかわっているか否かをダイレクトに説明するのは結構難しいです。したがって、変異ウイルスの出現している割合と感染の拡大の大きさ間に「関係があること」を見ているところまでで、因果関係については明らかでないのが現状です。つまり、変異ウイルス出現頻度と感染拡大はおのおのが独立した事象なのか、片方の結果としてもう片方が動くのか、そこはまだ分からないです。大事なことは(3密+大声)の回避、マスク着用、手洗い・うがいの励行、フィジカルディスタンス確保・移動制限、換気などの基本対策をおろそかにすると変異株出現頻度が高まるとともに感染が拡大するということです。
 ウイルスの変異自体をどんなに問題にしたところで、感染が拡大している今は実効再生産数を低下させるために感染の基本対策を徹底して行うことです。そして、もう一つは集団免疫の獲得、つまり新型コロナウイルスワクチンの普及です。現在、医療従事者に引き続いて高齢者優先接種が始まっています。基本対策の励行とともに高齢者優先接種が完了するころには、実効再生産数低下が明らかになってくるのではないかと期待しています。実際にN501Y変異を含む英国型変異株が流行していた英国、イスラエルでは、ロックダウン(感染の最も基本的な対策)とワクチン接種普及で新規感染者数が大幅に減少しています1,2)

1)  https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/ new_window
2)  Lancet. 2021 May 5;S0140-6736(21)00947-8. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00947-8.