特集 しまねの仕事

「共創」の理念のもと
新しい価値観で
地域の可能性を引き出す

株式会社 エブリプラン

コンサルタントについて、名前を聞いたことはあっても、実際にどんな仕事をするかは、知らない人も多いのではないでしょうか。具体的にどんな仕事をしているのか、松江市に拠点を置くコンサルティング企業のエブリプランを訪ね、業務内容についてお伺いしました。
オフィスがあるのは松江市にあるソフトビジネスパーク、県内の様々な企業が集まる産業団地です。その中でもひときわ目を引く、白を基調としたスタイリッシュな外観のオフィスです。県内から海外まで幅広く事業を行い、最近では人工知能(AI)を使ったプログラミング開発などにも注力しています。常務取締役である肥後淳平(ひご じゅんぺい)さんと、研究員で入社4年目の小田千愛(おだ ちあき)さんにコンサルタントの業務から地方が抱える課題などについてお聞きしました。

創業の経緯と業務の内容について教えてください。

肥後

会社の設立は1996年です。創業当初は建設、土木設計といったハード面のコンサルティングを中心に事業を行っていましたが、将来を展望していく中で、ソフト面のコンサルティング業務にもウェイトを置き、現在は、ハードとソフト両方のコンサルティングを行っています。

ハード面の業務内容は、都市計画や交通計画、土木設計などがあります。具体的には道路の設計図や住宅団地の造成計画の作成、測量して図面に起こすといったことを行っています。

ソフト面では主に、産業振興、観光振興、地域振興などを対象としています。行政のまちづくり計画のサポート、観光振興に関するプランニングなど、様々な事業提案を行っています。そのほか、海外事業にも着手していて、ODAといわれる政府の発展途上国の開発支援などにも、コンサルタントとして関わっています。

また、4年前に統計解析会社の「ERISA」を立ち上げて、島根大学医学部さんと連携しながら、ライフサイエンスに関する事業も展開しています。

御社の経営理念を教えてください。

肥後

一言で言うと、地域との「共創」、つまり、新しいものを共に創るということです。コンサルタントという立場上、直接的に何かをするというよりも、お客様が望まれることに対して一緒に計画や資金調達の方法を検討するなど、実現に向けた仕組みをつくることがミッションです。一緒に汗をかき動き、伴走して創っていくという、一連の流れを大切にしています。

我々の事業の成果が、地域の課題解決につながっていくことで、地域に対して貢献ができればと考えています。

今後の展開として、どのようなことを考えておられますか?

肥後

私たち自身がプレイヤーとして主体的な事業を創っていくことです。例えば、エネルギービジネス、観光ビジネスなど、既存の事業領域に縛られず、視野を広く持ちながら、社内で成長戦略に関する議論を重ねています。

また、コロナ禍において、都市と地方の距離感も変わってきたように感じます。地方の価値が見直されており、今後、移住・定住、空き家ビジネスなど、新たな可能性があるのではないでしょうか。都会とは異なる、田舎の暮らしやライフスタイルというのは、価値を見直されるタイミングかなと思っています。

地方に拠点を置くメリットは何でしょうか?

肥後

日本の課題の中には地方が抱える課題が少なくありません。例えば、人口減少、過疎化などは島根をはじめ、地方から始まっています。そういう意味では島根は様々な課題の最先端エリアと言えます。今後、東京を含めて日本全体に高齢化・人口減少の問題は避けて通れませんが、島根や中国地方では、20年も前に起きています。つまり、ここから新たなビジネスモデルや解決策が提案できれば、先々、都市部や海外に対して、新しいモデルケースとして提案できる。ここはチャレンジできる最適な環境だと思います。

また、人と人との距離が近いのも島根の良いところです。島根の人口は70万人を下回っていて、一見するとマイナス要素に思えますが、人が少ない分、一人ひとりとの繋がりが強いです。出会いたい人に出会えるというか、例えば何かやりたい時に、繋がりたい人と繋がることができる。人との縁がつくりやすい土地ですね。我々の事業も、ご縁を大事にしながら広げていったという経緯があります。海外事業もそうですし、医療の分野などでも同じことが言えます。

コンサルタントに向いているのはどんな人でしょうか?

肥後

先ほど「共創」の話をしましたが、コンサルタントの仕事には明確な正解というものはなく、お客様の意図を汲みつつ、プランを作り上げていくことが求められる仕事です。ですので、お客様がどういう思いを持っているか想像したり、汲み取る力は大切かなと思います。コミュニケーション能力は高いに越したことはないですが、加えて、人のことを応援するのが好きな人、人の役に立つことに喜びを感じられる人など、コンサルタントに限らずですが、それらに自分なりのやりがいや意義を見出だせる人が向いているように思います。

島根で働いていて良かったと思いますか?

肥後

私は学生時代は千葉に住んでいましたが、古い価値観なのか、働く場所=一生住む場所と考えています。ですので、「自分の好きな街に住みたい」というのが一つの判断基準でした。じゃあ好きな街とはどこか考えた時、私の場合は地元の松江でした。適度な都市的な空間があり、宍道湖や海などの自然もあるので、コンパクトなサイズ感が心地よいです。

プライベートではよく釣りに行きますし、去年は山に行ってタケノコ掘りもやりました。四季折々の旬の食材が楽しめるのも地方ならではですね。

お客様の希望を叶えるための提案を、本気で考え寄り添いながら行うコンサルタントの仕事。その業務に真摯に向き合う企業姿勢が伝わります。次に、滋賀県からのIターンで入社4年目の小田さんにお話を伺いました。

Iターン入社のきっかけを教えてください。

小田

滋賀県出身といっても生まれも育ちもというわけではなく、父がゼネコンに勤めていた関係で、九州と関西を転々としていました。小さい頃は毎年家が変わっている感覚で、ふと数えてみたら26年間で16回も引っ越しをしていました(笑)

滋賀大学在学中に参加した「地方就職セミナー」で島根県のブースに立ち寄ったところ、「島根にインターンシップにおいでよ」とインターンシップ募集のチラシをいただきました。特に明確な目標や夢もなかったので、試しにインターンシップに行ってみようかと、リストに載っていた島根の企業のWEBサイトを一つ一つ見ていきました。その中で一番、興味を惹かれたのがエブリプランでした。

特段、コンサルタント志望だったわけでもなく、コンサルタントについてもよく知りませんでした。たくさんの企業からエブリプランを選んだ理由は、見たWEBサイトの中で、最も企業イメージが伝わりやすかったというか、どんな人たちがどんな仕事をしているのか分かりやすかった点ですね。かなり直感的に決めた部分もあります。

インターンシップは5日間で、実際に現場に行き、打合せに同席したり、地域住民の方たちとのワークショップや会議に参加させてもらい、具体的に自分が働くイメージを持つことができました。インターン最終日には、もう既にここで働きたい!と思っていました(笑)その後、改めて面接を受けて、2017年に入社しました。

縁もゆかりもない島根県に来ることに抵抗はありませんでしたか?

小田

島根がどうこうよりも、この会社で働きたいという気持ちが強かったです。仮に会社が東北にあったら、東北に行ったと思います(笑)島根についてはそれまであまり縁がなく、大学の地域経済学でのケーススタディとして、海士町や雲南市など、島根県の事例を学んだことくらいでした。

小さい頃から引っ越しを繰り返していたせいか、住む場所にこだわりはなく、新しい環境に身を置くことに抵抗は少ないかもしれません。小さい頃、住まいが変わるたびに、ここは海がきれいとか、この町の人は歩くスピードが早いとか、子どもながらにそこの地域性を肌で感じていました。そういった体験から、住んでみて知ることもあるし、住めば都という感覚があったと思います。

今はどんな仕事をされていますか?

小田

業務内容としては、観光振興、地域振興、定住促進、人材育成などといったソフト事業が中心です。具体的には邑南町の観光戦略とか、県内の小学生を対象とした隠岐の体験旅行などに携わっています。入社から4年経ち、色々な仕事を任せてもらえるようになりました。入社後は早い段階で現場に出ていました。机上で学ぶよりも、現場で学ぶ、上司の仕事ぶりを見て学ぶという感じです。実際にお客様とやり取りしながら、少しずつステップアップさせてもらっています。

この会社に入り、それまで見えていなかった社会や世の中の仕組みが、仕事を通じて見えてくるようになりました。当然、忙しいし大変なこともありますが、お客様に「ありがとう」と言っていただき、人の役に立ったり喜んでもらえた時が、一番うれしい瞬間ですね。お客様との距離が近い仕事なので、緊張感もあるし、日々勉強させていただくこともたくさんあります。

肥後の話にもありましたが、都会は進んでいると思われがちですが、地域課題に視点を変えると、島根は最先端となります。だからこそ答えがないことも多いですが、島根に来て良かったと改めて思います。

社内結婚だそうですが、同じ職場で働かれていかがですか?

小田

部署が違うので会社では直接的な接点はあまりありませんが、お互いの仕事の状況などは分かるので、家事の分担など、言葉にしなくても察し合える部分はあります(笑)社内の仲の良いメンバーで自宅に集まって鍋をしたり、私たち夫婦で上司の家に遊びに行かせてもらったり、社内の有志で登山したこともありました。社員同士の風通しも良い職場だと思います。

新入生に向けてメッセージをお願いします。

小田

アルバイトなど実体験を伴う経験は大切だと思います。資格の取得などに励むことも大事ですが、もっと自分の肌で感じることも重要ではないでしょうか。どんな経験も絶対ムダにはならないと思います。

私自身もアルバイトを色々経験しました。居酒屋、カフェ、家庭教師、結婚式場のスタッフなんかもやりました。振り返ると人と接する仕事ばかりですね。そういう経験を通してコミュニケーション能力が養われ、人と直接関わる仕事がしたいと思うようになったのかもしれません。

アルバイトは働く大人を間近で見られるという機会でもありますし、接客業などはサービスを提供される側から提供する側になることで、新たな気づきを得る貴重な経験だったと感じます。

最後に、直感を大切にすることでしょうか。就職先も住む場所も、これから色々迷われるかと思いますが、私はインターンシップに行こうとか、この会社に決めようとか、本当に全部直感で決めてきました(笑)インターンシップはできるだけ経験しておくといいですね。実際に働く現場を見て、そこで自分が働くイメージを持てるかは大事です。逆に言うと、イメージ先行の憧れの会社でも、中から見ると違うと思うこともあるかもしれない。そういう違和感も大切ですし、インターンシップなどで現場を見ることは強くオススメします!

「場所は問題ではなく、働きたい会社がそこにあったから島根に来た」という小田さんの視点が新鮮でした。あれこれ迷うよりも、自分の直感を信じて行動してみる、仕事においても日々生活する上でも、必要な要素かもしれません。

ありがとうございました。
2021/01/29 C: Akiko Kotsugi PH: Akemi Sano
※新型コロナウィルス感染防止対策(スタッフのマスク着用、アクリル板の設置等)を行い取材しました。

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