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看護学研究科では、島根県の健康課題を深く理解し、保健・医療・福祉の質の向上に向けて、
主体的に探求できる研究能力を備え、地域医療を牽引する優れた看護実践者の育成を目指します。
島根県立大学出雲キャンパス
看護学研究科長
岡安 誠子
「不確かさ」に知性と信念で向き合う
本学看護学研究科は、2016年に博士前期(修士)課程、2019年に博士後期(博士)課程を開設しました。2023年春、本学で初めての博士(看護学)を送り出すことができました。2023年度からは、専門性を多角的に追求できるよう新たなカリキュラムが始まります。今後も社会の動向やニーズを捉え、プログラムも継続的に検討・充実させて参ります。島根県は東西に長く現役看護職の進学も多いことから、授業の多くでオンラインや夜間開講にも対応し学びやすい学習環境を整えています。
さて、現在は「VUCA(ブーカ)」の時代といわれます。「VUCA」とは、【Volatility(変動性)】【Uncertainty(不確実性)】【Complexity(複雑性)】【Ambiguity(曖昧性)】の頭文字からなる言葉です。2020年から始まったCOVID-19流行は世界の人びとの生活に大きな変動とインパクトを与えました。また、人々の背景や価値観の多様化から、さまざまな状況やそれに伴う判断は複雑化しています。更に、不安定な国際情勢や国内外での異常気象や自然災害、人工知能(AI)や技術革新も相俟って社会が抱える課題の複雑さや変化のスピードはますます増し、未来を見通すことの困難な時代を迎えています。加えて、わが国では保健・医療・福祉分野において、少子高齢化によるケアの担い手不足など、確実な課題も山積しています。
「VUCA」による混沌とした時代に、negative capability(ネガティブ・ケイパビリティ)が求められるといわれます。negative capabilityとは、「VUCA」に耐える力ともいえそうです。これからの看護職にも、人々の健康に係る権利や利益、また看護を担う人々を守るために速やかな対応力が求められる一方で、「不確かさ」に耐え踏みとどまり考えつづける力も求められるように思います。考え抜いた先に、自然科学のような「確かさ」を見出せるとは限りません。しかし、目の前にある現象と真摯に向き合い、知性で問題の本質を見極め他者にも伝え、確かな信念を以て難局を乗り越えていくことはできるように思います。この知性と信念は、常に前提を疑いながら自ら探究していく過程において培われます。研究科の仲間と議論を交わし、看護について共に探求していきましょう。
看護学の基礎的な能力を有する人
倫理的感受性をもって保健・医療・福祉の状況を捉え、柔軟に行動できる人
論理的思考力や課題探求心を持ち、看護学の知識を自ら学んでいくことができる人
看護学や看護実践の発展に寄与し、地域に貢献する意欲のある人
博士前期課程が目指す「島根県の健康課題を深く理解し、保健・医療・福祉の質の向上に向けて、主体的に探究できる健康能力を備え、地域医療を牽引する優れた看護実践者の育成」を達成するために、教育課程の編成には以下3点の特色を持たせています。
島根県の健康課題全体を理解するため、基盤科目には必修科目として「地元創成看護学持論Ⅰ」を設けました。専門領域においては、更に深く健康課題を探求し、地域医療を牽引する看護実践者を育成するため、設置の必要性に鑑み、島根県において特に課題とされる分野に直結する「基礎看護学領域」、「実践看護各領域」、「広域看護学領域」の3領域を置いています。
現場の課題発見・探求・解決に取り組むために、基盤科目・専門科目ともにフィールドワークを含む演習科目を配置しています
過疎・高齢化が進む中山間地域・離島に暮らす人々の複合的で困難な健康課題にアプローチができるよう、専攻する専門科目に加え、専攻以外の専門領域の科目を選択必修としています。
博士前期課程では、所定の期間在学し、所定の単位を修得するとともに、学位論文審査に合格し、以下の要件を満たしたと認められる学生に対し、修士(看護学)の学位を授与します。
高い倫理観と広い視野で看護の課題を科学的に探究し、患者及び家族・住民が自ら課題解決を図れるように、介入できる看護実践能力を備えている。
長期的展望をもって、患者及び家族・住民の状況を踏まえた最適な保健・医療・福祉サービスを統合して提供できるよう、多職種他機関とのコーディネート能力を備えている。
過疎・高齢化が進展する中山間地域・離島における健康課題に関心をもち、課題解決に向けて主体的に取り組む能力を備えている。
問題意識をもって看護現象を分析し、論理的に探究できる研究力を備えている。
看護学の基礎的な能力を有し、自ら学ぶ能力を持つ人
関係職種と協働するためのコミュニケーション能力を持つ人
地域社会の母子とその家族の健康課題の解決を図るための論理的思考力や課題探求力を持つ人
助産学の発展に寄与し、島根県の産科医療の課題解決に貢献する意欲のある人
博士前期課程高度実践者養成コース助産学領域が目指す「島根県の助産学に関する健康課題を深く理解し、助産学の対象となる人々の健康の保持・増進のために、倫理観に基づく実践と課題解決の両面から地域医療を牽引し、変革に取り組むことのできる優れた助産師」を達成するために、教育課程の編成には以下4点の特色を持たせています。
助産実践並びに助産学の発展に貢献する高度実践者の育成に必要な基礎的素養と優れた判断力を涵養するために「看護倫理特論」を基盤科目の必修に、「助産学特論Ⅰ~Ⅲ」を専門科目の必修に、「課題研究」を課題研究科目の必修に設置しています。
離島・中山間地域をかかえる島根県の産科医療現場の課題を理解するために「地元創成看護学持論Ⅰ」を基礎科目の必修に設置しています。またハイリスクケアができるための高度な助産実践能力及び指導的能力を育成するために「健康栄養持論Ⅰ」を基礎科目の必修に、「助産診断技術学演習Ⅰ~Ⅶ」、「助産学実習Ⅰ~Ⅲ」を専門科目の必修に設置しています。
多職種他機関とのコーディネート力を育成するために「コンサルテーション論」を基盤科目の選択として配置しています。そのうえで、地域社会の母子とその家族の健康課題を理解し、子育て世代包括支援ができるための優れた母子保健実践力を育成するために「母性・小児看護学持論Ⅰ・Ⅱ」、「地域看護学持論Ⅰ」、「助産管理」を専門科目の必修に設置しています。
助産学における科学的根拠をもとに、問題意識をもって助産の現象を分析し、物理的に探究できる研究能力を育成するために「看護研究方法論Ⅰ」、「看護研究方法論Ⅱ」を基礎科目の必修に、「助産学持論Ⅰ」、「課題研究」を専門科目の必修に設置しています。
博士前期課程高度実践者養成コース助産学領域では、所定の期間在学し、所定の単位を修得するとともに、課題研究論文審査に合格し、以下の要件を満たしたと認められる学生に対し、修士(看護学)の学位を授与します。併せて、助産師国家試験受験資格も与えられます。
高い倫理観と明確な看護観をもち、科学的根拠に基づいた優れた判断力と実践力を備えている。
離島・中山間地域をかかえる島根県の周産期医療を維持するために、ハイリスクケアを含むすべての症例に助産ケアを提供できる優れた助産実践能力及び指導的能力を備えている。
地域社会の子育て世代とその家族の健康課題を理解し、包括支援ができるための優れた助産実践力、多職種多機関とのコーディネート力を備えている。
助産学における課題を論理的に解決できる研究能力を備えている。
協調性と自律性を備え、多職種と協働できるコミュニケーション能力を持つ人
倫理的感受性をもって保健・医療・福祉の状況を考え、柔軟に行動できる能力を持つ人
看護実践の科学的な根拠を探求し、自己研鑽し続ける能力を持つ人
地域医療に関心をもち、地域の人々の健康の維持・増進・疾病の悪化予防に寄与する意欲のある人
高度実践者養成コース 診療看護師(NP)プライマリ・ケア領域が目指す「島根県の健康課題を深く理解し、診療看護師(NP)としての優れた看護判断力と調整力をもって、地域での暮らしや看取りまで見据えた、長期的ケアが実践できる力と研究力を有した高度実践者」を達成するために、教育課程の編成には以下5点の特色を持たせています。
プライマリ・ケアの分野で医療行為を安全に実施する能力を身につけるために、特定行為研修の研修内容を含み、講義・演習・実習を行います。
フィジカルアセスメント、臨床薬理学、病態生理学の理解を深める科目を設け、的確な臨床判断、治療の管理、治療効果の判断を実践する基礎的能力を身につけます。
チーム医療の中で医師ならびに関係者と連携・協働し、対象者の意思決定を尊重した医療・看護を提供する能力を身につけます。
看護の高度な実践者としての能力の修得と質担保のために、基礎知識確認試験や実習前のOSCE終了時試験など段階的に試験を実施します。
看護学における科学的根拠をもとに、問題意識をもって看護の現象を分析し、論理的に探究できる研究能力を育成するために「看護研究方法論」を基盤科目の必修に、「NP論」「プライマリ・ケア看護学特論」を専門科目の必修に、「課題研究」を課題研究科目の必修に設置しています。
博士前期課程高度実践者養成コース診療看護師(NP)プライマリ・ケア領域では、所定の期間在学し、所定の単位を修得するとともに、研究論文審査に合格し、以下の要件を満たしたと認められる学生に対し、修士(看護学)の学位を授与します。併せて、一般社団法人日本NP教育大学院協議会の診療看護師(NP)資格認定試験の受験資格も与えられます。
在宅、施設、慢性期病棟などで、療養者の状態変化や、慢性疾患をもつ患者に対して、看護学と医学の視点から包括的なアセスメントを行い、的確な臨床判断、治療の管理、治療効果の評価を自律的、かつ必要に応じて多職種と協働で実施できる能力を備えている。
個人や家族の価値観、意思決定を重視してQOL(生活の質)向上を目指し、倫理に基づく、統合的なプライマリ・ケアが提供できる能力を備えている。
多職種と協働して安全・安心な医療に貢献できる能力を備えている。
実践の場にある課題について、論理的に探究できる能力を備えている。
看護学を専攻する看護専門職として必要な教養と素養、倫理観を備えている。
看護学に関連する基礎的な研究能力を有し、自律して研究に取り組む姿勢を備えている。
看護学の充実・発展・革新を志向し、専門的知識・技術と教育指導力を備えている。
看護学教育者・研究者、継続教育や自律して研究が継続できる
看護専門職者のいずれかを志望している。
論理的思考と柔軟な発想をもち、真理を探究できる。
看護実践や研究を通して取り組むべき研究課題を有していることが望ましい。
以下を博士後期課程の教育課程編成の基本方針としています。なお、授業科目は、基盤科目、専門科目、研究科目に分類しています。
看護実践並びに看護学の発展に貢献する看護教育者・研究者の養成に必要な基礎的素養を涵養するために「看護研究特論Ⅰ」、「看護研究特論Ⅱ」を必修の基盤科目として設定しています。
基盤となる理論と知識を学修し、看護基礎教育、看護卒後教育、看護継続教育を展開できるよう「看護教育学研究」を必修の基盤科目として設定しています。
過疎・高齢化が進展する中山間地域・離島地域における健康課題を把握し、基盤となる知識や地域課題の特性を学修するために、「看護研究持論Ⅰ」を必修とし、「地元創成看護学持論Ⅱ」、「保健医療福祉政策論Ⅱ」、「健康栄養持論Ⅱ」を選択必修の基盤科目として設定しています。
専門領域の実践と研究の課題、用いられる研究方法について追究し、学位論文への取り組みへ導くよう「看護教育持論Ⅲ」、「精神看護学持論Ⅲ」、「成人・老年看護学持論Ⅲ」、「地域看護学持論Ⅲ」、「母性・小児看護学持論Ⅲ」の専門科目を設定しています。
学位論文の研究に多様な視点で計画的に取組むために、早期から専門科目と「後期特別研究」を設定しています。
博士後期課程では、所定の期間在学し、所定の単位を取得するとともに、学位論文審査に合格し、以下の要件を満たしたと認められる学生に対し博士(看護学)の学位を授与します。
看護専門職者として必要な高い倫理観と論理的思考力をもち、看護学の発展に寄与する研究を自律して行える。
生涯にわたり研鑽の必要な看護教育学に精通し、高度な専門的知識・技術と教育指導力をもって質の高い教育を展開できる。
過疎・高齢化が進展する中山間地域・離島地域における健康課題を把握し、健康栄養など地域のニーズに合った保健・医療・福祉施策の進展に向けた研究的取り組みができる。
看護ケアが提供される場に関与する多様な要因を把握して、看護提供システムの改善・改革を目指した研究を指導できる。
看護の専門分野における多様かつ複雑な問題の研究的解明とその成果を適用しつつ、多職種と連携し研究活動を推進できる。