保健管理センター長のひとこと【チリカベ】
2016/2/18
野菜、海藻類、豆類、果実類、種実類など植物性食品の色素や香り、苦みなどの成分から発見された化学物質をフィトケミカルといいます。フィトケミカルとは、ギリシャ語の植物を意味するフィト(phyto)=植物と、ケミカル(chemical)=化学物質で、「植物性化学物質」のことです。人間の生命維持に必要な栄養素には、①糖質、②たんぱく質、③脂質、④ビタミン、⑤ミネラルの5つがあり、総称して「5大栄養素」と呼ばれていますが、最近では「第6の栄養素」として食物繊維、そして「第7の栄養素」にこのフィトケミカルが位置づけられ、非常に注目されています。フィトケミカルは化学的構造の特徴からポリフェノール類、テルペノイド類、有機硫黄化合物などに分類され、ほとんどのフィトケミカルは抗酸化作用を有し、活性酸素がその発生に関与している疾病予防に有効であるとされています。
元々、植物は動くことができません。そのため、独特の香り、苦み、渋みによって、周囲にいる虫や動物などの敵から自身を守るためにフィトケミカルを産生します。そして、紫外線を浴びれば浴びるほど、紫外線から身を守るため鮮やかな濃い色になります。そのため、色が濃い野菜や果物にはより多くのフィトケミカルが含まれています。
そんな中、赤ワインに含まれているフィトケミカルの一種であるポリフェノールには、その有する抗酸化作用により動脈硬化予防、ガン予防、アルツハイマー病予防、高血圧予防などの効果が認められています。さらに、赤ワインに含まれるポリフェノールの一つであるレスベラトロールは、酵母菌や動物実験でサーチュウインというその活性化により生命の寿命が延びるとされている長寿遺伝子を活性化させる作用が報告されています。これまでは、長寿遺伝子はカロリー制限をしなければ、活性化しないとされていました。また、レスベラトロールは赤ワインに含まれるポリフェノールのうちでも極めて強い抗酸化力、抗炎症力を示します。レスベラトロールはぶどうの皮の部分に含まれていて、カルベネ・ソービニョンのブドウ品種から作られた赤ワインに多く含まれています。さらに、世界のブルーゾーンと言われている長寿地域では赤ワインの生産量・消費量が多いことが知られています。
先日、チリワインの日本への輸入が2015年にフランスワインを抜いてNo1になったというニュースがありました。チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンで造られた赤ワインのことを「チリカベ」といいます。チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンは、世界で最も美味しく熟成する品種であり、「チリカベ」は世界的に美味しいワインの代名詞とされています。チリは南半球に位置し、暖流の影響を受ける比較的温暖な地中海性気候です。そして、太陽の光をたっぷり浴びたレスベラトロール豊富な良質なカベルネ・ソーヴィニヨンが成熟するのではないかと思います。
私も最近は、「チリカベ」を飲んでいます。価格の割りにはとても美味しいと思います。アンチエイジングの第一人者である白澤卓二先生はご自身の著書(「なぜ長寿の人は赤ワインをのんでいるのか?」2012年(メディアファクトリー))のなかで、「赤ワインは健康にいいポリフェノール、さらに健康効果が期待されるレスベラトロールを豊富に含んでいます。けれども、その成分、栄養素と同じくらい、赤ワインを飲むということ、リラックスしてワイングラスを傾ける時間を過ごすことが大切なのですね。」と言っておられます。赤ワインを飲んで美味しく、心地よく感じられるように「笑顔」と「ありがとうのこころ」を持って暮らす。いいことではないでしょうか。私は3日かけて1本の赤ワインを飲んでいます。


2016年2月18日
秦 幸吉
参考文献
1) Heber D: Phytochemicals beyond antioxidation. J Nutr 134: 3175S-3176S, 2004
2) 白澤卓二著(2011年) 「100歳までガンにならない食べ方 ボケ内食べ方」(青春出版)
3) 白澤卓二著(2012年)「なぜ長寿の人は赤ワインをのんでいるのか?」(メディアファクトリー)
4) 藤田紘一郎著(2013年)「腸をダメにする習慣、鍛える習慣 腸内細菌を育てて免疫力を上げる30の方法」(ワニブックス)
5) 白澤卓二著(2015年)「体が生まれ変わる「ケトン体」食事法」(三笠書房)