保健管理センター長の一言【血糖値変動とインスリン分泌】


2016/3/16

 糖質(炭水化物から食物繊維をマイナスしたもの)の多い食事を摂取すると食後に高血糖になり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが膵臓から多量に分泌されます。しかし、血糖値が高くなり過ぎるとインスリンが一気により多く分泌されるため、血糖値が下がり過ぎます。この現象を「血糖値の乱高下」と言います。食後高血糖、さらに血糖値の乱高下は体内で多量の活性酸素を産生させます。さらに高血糖の状態になると、体内にあるタンパク質に糖がくっつく糖化反応を起こします。こうなるとさらなる活性酸素が発生します1-4)。したがって、活性酸素と糖化反応のため、体は「錆びつき」、「焦げつき」、生活習慣病へと発展します。そして、糖質過多の食事を続けていると、血糖値を下げるホルモンである「インスリンの効きが悪い」か「インスリンが分泌されない」ため、血糖値が高い状態が持続します。つまり糖尿病が発生(ときに完成)します。

皆さまのまわりに長寿で元気な方がおられましたら、その方はおそらく糖尿病ではないはずです。健康で長生きしている人には糖尿病はきわめて少ないです。長寿で健康な方々は生活習慣病にならなかった方々です。食後高血糖、血糖値の乱高下、インスリン分泌過多は肥満、糖尿病、心血管系疾患(心筋梗塞、脳出血、脳梗塞など)、てんかん、認知症、がんなどの原因となります5)。日頃から食事の前後での血糖値変動をあまり起こさない、そしてインスリン分泌に負担をかけないことが大切です。そのため、日常の食生活はとても重要となってきます。

私自身はどうかと思い調べてみました。チリ産サーモンの素焼き(図1)、島根和牛のステーキ200g(図2)、ココナッツオイル入りサバカレー(図3)(私の盛りつけが下手で、ビジュアル的に良くない感じがしますが、サバの断面が上手く撮れています)を食べたときの食前と食後1時間での血糖値を測定しました。チリ産サーモンの素焼き(前:76、後:82)、島根和牛のステーキ200g(前:71、後:84)、ココナッツオイル入りサバカレー(前:77、後:96)(単位はmg/dl)でした。

 図1 図2

          図1                   図2 

 図3 

          図3

健常人の食前後での血糖値変動に関しては、食事内容、年齢などでかなり異なりますので、詳細な検討は行われてはいないのが現状ですが、このサイト6,7)を参考にすると、健常人では食後1時間後の血糖値上昇は通常少なくとも40mg/dlくらいですので、私の場合は食事前後での血糖値変動は比較的少ないと思います。しかしながら、インスリン分泌過多で血糖値変動が少ないことも考えられましたので、空腹時の血中インスリン値も測定してみました。結果は2.1μU/mL(正常値:1.413.8μU/mL)でした。空腹時の血中インスリン値が15μU/mL以上を示す場合は、明らかなインスリン抵抗性(インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態)の存在が考えられるようです。今回、頻回に測定してはいないですが、現状では、私は食事前後での血糖値変動が少なく、インスリンに負担をかけない食生活をしているのではないかと思っています。

以前から言っていますが、私はケトジェニックダイエットを行っています。このダイエット法は楽しくて、美味しくて、細かなカロリー制限(無制限ではない)がないことなどが特徴です。図13で提示しましたように美味しいものが食べれます。さらにこんなメニュー(図45(図5は分かりにくいと思いますが、白菜と豚肉のミルフィーユ鍋です。)もあり、いくらでも工夫できます。 

 図4 図5

         図4                     図5

 もちろん、このような品以外に、毎日、しっかり野菜を食べ、適度にエクストラバージン・オリーブオイル、エクストラバージン・ココナッツオイル、納豆(発酵食品)、乳製品、ナッツ類などを摂取しています。以前のダイエットではよく遭遇された空腹感をはじめとする辛い感じはほとんどなく、楽しく、美味しく感じながら食事をしています。今後も続けてゆきたいと思っています。

試してみたい方は文献8,9)などを参考にして下さい。

2016年3月16日  秦 幸吉 

参考文献

1)           白澤卓二著(2012)2週間で効果がでる!ケトン食事法」(かんき出版)

2)           白澤卓二著(2014)「食べるのを我慢できないのは、あなたの意志が弱いからではありません」(KADOKAWA

3)           白澤卓二著(2015)「体が生まれ変わるケトン体食事法」(三笠書房)

4)           山田 悟著(2015)「糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて」(幻冬舎)

5)           Paoli A et al. Beyond weight loss: a review of the therapeutic uses of very-low-carbohydrate (ketogenic) diets. Eur J Clin Nutr 2013; 67: 789-796.

6)           https://blerdology.co/kettouchi/timing

7)           https://www.tsuruha-hd.co.jp/pharmacist/society/pdf/2013_04_04.pdf#search='%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4+%E5%81%A5%E5%B8%B8%E4%BA%BA+%E9%A3%9F%E5%89%8D+%E9%A3%9F%E5%BE%8C'

8)           http://macaro-ni.jp/13490

9)           斎藤糧三著(2016)「ケトジェニックダイエット糖質制限+肉食でケトン体回路を回し健康的に痩せる!」(講談社)