保健管理センター長のひとこと(2016年7月)
グルテンフリー
2016/7/14
7月14日
「緑の革命」という言葉をご存知でしょうか?Wikipediaによると「緑の革命(みどりのかくめい、Green Revolution)とは、1940年代から1960年代にかけて、高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が向上し、穀物の大量増産を達成したことである。農業革命の1つとされる場合もある。ロックフェラー財団は、1944年結成のノーマン・ボーローグらの研究グループ(1963年に国際トウモロコシ・コムギ改良センターに改組)と1960年設立の国際稲研究所に資金を提供し、緑の革命を主導した。」と記載されています。
このとき行われた品種改良は半矮性遺伝子を組み込んだ遺伝子操作です。そして、背が低い、背が低いことで風雨でも倒れにくく、茎が短い分「穂」に栄養が集まり増えて、収穫高が上がる小麦が作られるようになりました1)。この品種改良のために小麦にはグルテンとういタンパク質が過剰に含まれるようになり、グルテンが人体に様々な悪さをするようになりました。
グルテンは胃の中にある酵素や胃酸と反応して、いろんなポリペクチド(タンパク質)に分解されます。そのポリペクチドは抗グルテン抗体ができる抗原になったり、免疫機能に変化を与えたり、細胞毒性を発揮したり、腸管の透過性を高めて、腸内細菌の発生する毒素を血中に入れたり、セリアック病の炎症を引き起こしたりします。さらにグルテンは、エクソルフィンという麻薬のようなポリペクチドにも分解されます。このエクソルフィンは体内に吸収されて、脳にあるモルヒネなどの麻薬の受容体であるオピオイド受容体に結合します。すると、多幸感を感じるようになり、次第に小麦依存性が生じてきます。また、グルテンと同時に小麦にはアミロペクチンAという炭水化物も多量に含まれるようになりました。アミロペクチンAは他の糖質よりも消化・吸収が早いため、食後血糖値の乱高下を招き、体内で活性酸素が発生したり、炎症が起きたりします。1,2,3)
このような理由で小麦食品摂取により、肥満、糖尿病、心臓病、脳血管障害、認知症、ガンなどの生活習慣病、老化、うつ病などの気分障害、関節炎などの「痛み」など現代人が抱える様々な不調が生じてきます。
男子テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手(2016年7月11日現在)は2010年にグルテン不耐症であると判明しました。それ以来ジョコビッチ選手は、小麦製品を完全に断ったグルテンフリーダイエットを取り入れています。詳細は「ジョコビッチの生まれ変わる食事」で述べられています4)。
最近、グルテンフリーという新しい食事法が注目されています。先日、東京へ出張した際に、表参道にある「Natural Cream Kitchen」というグルテンフリーカフェに行ってみました。店内にこの店のコンセプトが書いてあったので撮影させていただきました。グルテンフリーの意味を分かりやすく表現しています。小麦製品、砂糖などの精製食品、添加物を取らないことが広義のグルテンフリーダイエットの基本だと私は考えています。(ランチで食べたローストビーフと米粉パンの写真も掲載しています。)
最近、急に太りだしてきた、休んでいるけど疲れが取れない、仕事中によく眠くなるなどと感じている方は、グルテンフリーな食事をされてみては如何でしょうか。グルテン、グルテンフリーダイエットの詳細に関しては、参考文献を参考にして下さい。
2016年7月14日
参考文献
1) ウィリアム・デイビス(白澤卓二訳)(2013年)「小麦は食べるな!」(日本文芸社)
2) デイビッド・パールマター、クリスティン・ロバーグ(白澤卓二訳)(2015年)「「いつものパン」があなたを殺す」(三笠書房)
3) 白澤卓二監修(2016年)「いつもの小麦が不調の原因! グルテンフリー入門」(宝島社)
4) ノバク・ジョコビッチ(タカ大丸訳)(2015年)「ジョコビッチの生まれ変わる食事」(三五館)
5) http://ure.pia.co.jp/articles/-/34088
「Natural Cream Kitchen」の店内
2016年7月14日
